がん遺伝子治療とは

人間の体内では「がん抑制遺伝子」や「免疫機能」が、異常な細胞の増殖を防ぐために重要な働きをしています。しかし、がん抑制遺伝子が傷ついて正常に働けない状態になると異常な細胞の増殖が始まっていきます。そしてやがては大きな「がん」を発症してしまいます。

がん遺伝子治療とは

がん細胞に正常ながん抑制遺伝子を導入することよって、がんの増殖を止め、アポトーシス(自然な細胞死)に導く、がんの治療です。がんの「増殖」や「不死」の原因となる遺伝子に直接アプローチする治療法であることから「ステージ」や「転移」「再発」など、病期を問わず治療が可能です。副作用が起きても軽いことから体力の衰えた末期の患者さまであっても治療を受けることができます。

がん細胞の多くはがん抑制遺伝子が欠落しているか、正常の機能をはたさなくなっています。がん遺伝子治療はがん抑制遺伝子やマイクロRNA抑制タンパクを体内に導入することにより、がん細胞の増殖を止め、自然な細胞死を迎えるように誘導する治療です。

人体は60兆個の細胞で成り立つ

正常細胞はもともとがん抑制遺伝子を持っているので、がん遺伝子治療による影響を受けることはありません。がん細胞だけに作用する治療となります。

がん細胞の異常な増殖・生存

がん遺伝子治療は標準治療との相乗作用が期待できる治療です。標準治療を開始する前でも、もしくは治療中であっても、がん遺伝子治療を組み合わせることによって寛解などの可能性も見込めます。
さらに、がん遺伝子治療の特徴である、正常細胞に影響を及ぼさず、三大治療のやや弱点とも言える再発予防にも働きかけます。

標準治療とがん抑制遺伝子

抗がん剤には自滅促進型と増殖抑制型(分子標的薬)があります。

  • 自滅促進型の抗がん剤とp53・p16はDNAに対する作用機序が似ているため相互作用を示します。
  • 増殖抑制型の抗がん剤とPTENは同じ増殖シグナル抑制に働きかけることから相互作用を示します。
  • 放射線治療に対して、DNAに損傷がある細胞を自滅に追い込むp53・p16は相互作用を示します。

このようにがん遺伝子治療は放射線治療や抗がん剤治療など、標準治療との併用による複合治療は相互作用が期待されます。主に点滴による投与となることから身体的にも精神的にも負担の少ない治療と考えられます。

遺伝子治療とベクター

遺伝子治療とは疾患の治療を目的として、遺伝子または遺伝子を導入した細胞をからだの中に入れる治療法です。この際、遺伝子を運ぶ役割をはたすものが、ベクターと呼ばれています。当初の遺伝子治療ではアデノウイルスというベクターを用いていましたが、発現期間が短く、細胞の核に入り込む可能性も少ないため遺伝子治療のベクターとしては不十分なものでした。後に発現期間が長く、細胞の核にまで容易に入り込む特別な微小胞を使用することにより、遺伝子治療の効果は前進しました。

近年の遺伝子治療ではより小さなベクターを使用しています。これにより従来の点滴を中心とした治療効果が前進したばかりでなく、近い将来には経口薬を製造できる可能性が見えてきました。

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